ビルの省エネ対策とは

ビルは、その機能を保つために、電気、熱など、たくさんのエネルギーを使っています。「どれだけ省エネをしながらビルを使い続けることができるか」は、ビル経営のコストに大きく関わる問題です。また省エネ化によって環境性能を向上させることは、ビルの収益性を高めるだけでなく、地球環境を大切にする姿勢を表すことであり、ブランドイメージの向上、テナント誘致力の強化にもつながります。ビルの省エネについての基礎知識と具体的な対策をまとめてみましたので、参考にしてください。

ビルの省エネのメリット

収益性に貢献する建物の省エネ

ビルの省エネには、次の4つのメリットがあります。1つ目は、ビルの競争力アップです。空調等の設備を更新し性能の高いものを採用することで顧客に対する訴求力が高まり、入居者、テナントの確保につながります。2つ目が、光熱費の削減です。光熱費削減の効果は、テナントやビルオーナーの事業の規模全体からみると小さいかもしれません。しかし、定量的(数字で)に把握することができる数少ない効果ですから、テナントにとってもビルオーナーにとっても、嬉しいコスト削減対象といえます。3つ目は、入居する企業の生産性向上です。省エネ改修によりオフィスが快適になれば、そこで働く人たちの生産性がアップします。金融、IT、コンサルティングなどの人件費の高い業界では、生産性向上がもたらすインパクトは光熱費削減効果よりもはるかに大きいといわれています。そして4つ目は、環境性能に関する 認証・ラベリングによる賃料の増加です。建物の省エネルギー性能を評価・表示する第三者認証制度BELS(べルス)等の評価向上により、ビルの訴求力が高まり、高い賃料の設定が可能になると考えられます。

ビルの具体的な省エネ対策

照明や空調の具体的な省エネ手法

ビルのエネルギー消費の大半を占めるのは、照明や空調設備です。照明設備の省エネ策の定番となっているのが、消費電力を抑えることができるLEDやHf蛍光灯への置き換えです。
空調設備の省エネ対策の代表的なものとしては、ヒートポンプ技術を用いた高効率空調の導入などがあります。少ない投入エネルギーでも、空気中などからの熱を利用することで大きな熱エネルギーが得られるヒートポンプ技術は、長年にわたり研究されてきましたが、最近になってインバータ制御の高度化で省エネ効果がどんどん高まっています。
その他、冷房の低減策として、「屋上の遮熱塗装」や「ペアガラス(2枚のガラスの間に密閉された中間層を持つため断熱効果がある)への遮熱フィルムの貼り付け」といった取り組みも一般的です。また最近はエネルギー消費を「減らす」のではなく、エネルギーそのものを作り出す。つまり太陽光発電システムなどによる創エネによる省エネも活発になっています。その他、機器ではなく建物自体の改修による省エネも進んでいます。そのひとつが自然換気の利用です。窓や換気口を通して、風の圧力や屋内・屋外の温度差によって搬送動力なしで換気ができるようにし、冷房用の電気を節約します。
省エネ設備の導入は、条件を満たせば国土交通省の「既存建築物省エネ化推進事業」などの省エネ補助金の対象となります。省エネ投資をご検討中であれば、補助金の取り扱い経験が豊富な工事会社、保全会社に一度相談してみてはいかがでしょう。

新たな省エネ手法・エコチューニングとは

機器の運転コントロールでエネルギーを節約

日本は、国際社会へのコミットメントとして、2030年度に「2013年度比マイナス26.0%のCO2排出量の削減」を掲げています。しかし国内の業務部門(事務所・ビル、商業・サービス業等)からのCO2排出量削減は順調に進んでいるとはいえません。そこで環境省が打ち出したのが「エコチューニング」です。「エコチューニング」とは、業務用等の建築物から排出される温室効果ガスを削減するため、建築物の快適性や生産性を確保しつつ、設備機器・システムの「適切な運用改善」等を行うことです。ここで言う「適切な運用改善」とは、「エネルギーの使用状況等の詳細な分析、軽微な投資で可能となる削減対策も含め、設備機器・システムを適切に運用することにより温室効果ガスの排出削減等を行うこと」と定義されています。
従来の省エネは、建物で使用する設備、たとえば空調機を新たに省エネタイプに置き換えようという発想が中心でした。一方、エコチューニングは、同じ空調機をどういう時に稼働させて、どういう時に停めるかを細かくコントロールすることにより、無駄な消費エネルギー削減しようという発想をとります。現在、「エコチューニング事業者認定制度」のもと、各地のビルで、大きな初期投資がかかる大型最新設備の導入ではなく、既存設備の適切な運用改善等によってCO2や光熱水費の削減を目指す、エコチューニングの取組みが進められています。

日本メックスも、建築物のエネルギー消費実態や特性の把握、設備機器・システムの効率的な運転計画、運転設定、管理を行うことができる技術者を抱える、エコチューニング事業者として活動しています。

(文:伊東慎一)